今月の一冊(2025年12月)『筆蝕の構造―書くことの現象学』

今回は、石川九楊著、『筆蝕の構造—書くことの現象学』をご紹介します。 本書は、書家として活躍されている著者による書道の枠を超えて「書く」という行為の本質に迫る哲学的な書字論です。題名にある「筆蝕(ひっしょく)」は著者による造語で、筆が紙に触れ、圧し、運び、止め、そして離れる、といった書く動作の全体に通底する触覚とそこに定着された痕を指し、書くことの根源的な力を表現しています。話…