2026.6/1

今月の一冊(2026年6月)『活字礼讃 全』

今回は、『活字礼讃』を紹介します。

本書は26人の、編集者、デザイナー、活字研究家、作家などさまざまな著名人による活字文化に関するエッセイ集です。

本書のタイトルから、情緒的な文章で活版印刷を称揚したり懐かしむものなのでは…と、どきどきしながら読み始めましたが杞憂でした。金属活字と写植文字、活版印刷とオフセット印刷などを比較しながら、それぞれの優位性や欠点への言及も多くありました。

活版印刷所で文選工として働きながら本を書き、業界の衰退とともに職を変えたという桐生悠三の、文選工としての「わたしの指先からも活字の感触はうすれた。完全に失くなったといっていい。」という実感が伴った一文が印象に残っています。かつては彼のような人の手によるものであった行程の一つひとつが、パソコンに押し込められて見えなくなり、これらの技術や活字文化の移り変わりを経験していない私にとって、そのシステムを理解することはいつも難しく、こういった本によって大きく補われます。

この本の刊行は1991年で、金属活字による印刷が減りつつあった時期です。活字文化の全盛から衰退までを知る人たちによるさまざまな視点で、当時の様子と空気感を知ることができます。

書籍情報:
『活字礼讃 全』
著者:杉浦康平、府川充男、中垣信夫他
発行:活字文化社

購入情報:
https://nostos.jp/archives/132852?srsltid=AfmBOopQmi3Yx3nBISIDIG3Xd8MpQ5TPm3cDfc6qKFp481Znnt7M3RQ3

在庫切れですが、古書で購入できます。

(RK)

シリーズ記事一覧

カテゴリー