2026.3/16

視覚調整と書体デザイン02「線の長さと交差」

前回の記事では、「線の太さ」についての視覚調整のポイントを紹介しました。今回は「線の長さと交差」に着目して見ていきましょう。

線の長さを調整する際のポイント1つ目は「横線より縦線を長く」です。 数値的に同じ長さの縦線と横線を並べると、人の目には横線の方が長く見えてしまいます。そのため、横線よりも縦線を少し長めにすることで、ちょうど同じくらいの長さに見えるようになります。

2つ目のポイントは線の「交差位置と長さに注意」です。

先ほど、同じ長さのはずの縦線と横線で、横線の方が長く見えてしまう錯視について触れましたが、線同士が接したり交差する場合、交差する位置や交差の仕方によって、どの線がどの程度の長さに見えるかは変わってきます。

たとえば、下の左側の図では縦線の真ん中に横線の左端が垂直に接するように並べています。この場合は最初にお見せしたパターンと同じで、横線の方が長く見えています。

しかし、同じ図を90度回転させてT字型のように配置すると、今度は縦線の方が横線より長く見えます。

また、下の図のように線の両端に矢印のようなV字のモチーフを付けると、モチーフの向きによって真ん中にある線の長さが異なって見えます。

このように、線の配置や接する他の図形の形などによって、数値的に同じ長さの線も、さまざまな長さに変化して見えます。そのため、「どの線を何パーセント長くする」といったような一律のルールは当てはめられず、ケースバイケースで自然に見える長さを探っていく必要があります。

3つ目のポイントは「下側を長く」「右側を長く」です。前回の記事で、人の目には下部より上部が、右側より左側が膨張して見える錯視について触れました。この錯視は、線の太さだけでなく長さについても同じ法則を当てはめることができます。

線同士が垂直に交差するとき、交差点を上下左右の数値的な中心に置いてしまうと、上側と右側が長く見えてしまい、ちょうど真ん中で交差しているようには見えません。きれいに上下左右の中心で交差しているように見せるには、横線の交差点は左右の中心より少し左側に、縦線の交差点は上下の中心より上側に寄せる必要があります。

4つ目のポイントは「斜め線の交差に注意」です。2つ目のポイントで線同士が垂直に交差する際の注意点を紹介しましたが、斜めに交差する場合には、また異なるポイントに注意する必要があります。

複数の線が斜めに交差する際、直線同士を重ねていても、いずれかの線が交差点で折れ曲がって見えたり、1本のつながった直線に見えなかったりする場合があります。この錯視が起こる頻度は、線の長さや垂直交差に比べて少なく、線の角度や太さの組み合わせによって、見た目上問題なく見えることもあれば、歪んで見えてしまうこともあります。

下の図の例では、中央の太い縦線に1本の細い斜め線を重ねています。しかし、太い縦線よりも左側の斜め線は下の方に、右側の斜め線は上の方にずれて見え、1本のまっすぐな斜め線に見えなくなってしまっています。

この場合、左側の斜め線の交差点を上に、右側の斜め線の交差点を下に寄せることで、斜め線がきれいに繋がって見えるようになります。

視覚調整を実際のデザイン作業で応用する際には、文字の形状は有機的なものも多く、上記の図で示したような幾何的な形状ばかりを扱うわけではありません。制作する書体ごとのデザインやスタイル、それぞれの文字の形によって、どの程度の調整が必要になるかが異なってきます。 さまざまな側面を考慮しながら試行錯誤をしていく、とても奥深く繊細さが求められる作業ですが、基本的な法則を知っておくことが、文字のバランス感覚を掴む第一歩になります。

(XYZ)

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