2026.3/23
TPアプリコット開発ストーリー01:珍しい欧文グリフ
TPアプリコットの欧文には、デザインの特徴をより活かすために、少し珍しいグリフや機能を取り入れています。
ひとつ目は、「前後関係に依存する字形」と呼ばれるオルタネートグリフです。
これはOpenType機能のひとつで、複数の字形をオルタネートとして用意し、前後に並ぶ文字の組み合わせに応じて、使用される字形が自動的に切り替わる仕組みです。筆記体などで、文字同士のつながりを自然に見せるためによく使われています。
TPアプリコットでは、手書きらしいのびのびとした字形を活かしつつ、字間をきれいに保つために、この機能を採用しています。
たとえば、小文字の「f」のディセンダーは、左に大きく張り出した形をしています。この字形は、「o」などディセンダーを持たない文字と並んだときには、独特のリズムや表情を生み出してくれます。一方で、「y」などディセンダーを持つ文字と並ぶと、ディセンダー同士がぶつかってしまいます。
そこで、ディセンダーを短くした別デザインの「f」をオルタネートグリフとして用意し、「y の右隣に f が来た場合は、ディセンダーの短い f に切り替える」という設定を行っています。これによって、個性的な字形を保ちながら、無理のない文字組みを実現しています。
すべての「f」のディセンダーを短くする、という選択肢もありましたが、長いディセンダーが生み出す表情は、この書体のイメージを形づくる大切な要素です。そのため、字形を状況に応じて使い分けられる「前後関係に依存する字形」の機能を採用しました。

もうひとつの特徴は「合字」です。
TPアプリコットには、「fl」や「fi」といった基本的な合字に加え、「ft」「fb」「ffi」など、通常のStdN版には入っていない合字も収録しています。
これらも、「前後関係に依存する字形」と同様に、文字の個性とスペーシングの美しさを両立させるための工夫のひとつです。

ここで紹介したグリフや機能は、Adobe IllustratorやAdobe InDesignのOpenType機能の設定から試すことができます。気になる方は、ぜひ実際にオン・オフを切り替えながら、文字の表情の変化を楽しんでみてください。
今回ご紹介した裏話以外にも、TPアプリコットの制作過程やコンセプトを、開発ストーリーページで詳しく紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
(XYZ)