シリーズタイプエンジニアリング/ヒントの話
2026.7/27
ヒントの話07「ヒントのこれから」
今どきの高解像度デバイスでは、アウトラインをそのまま描画しても十分に滑らかな結果が得られることが多くなりました。ディスプレイ密度の向上によって、グリッドとのずれが目立ちにくくなり、従来のように強い補正を必要とする場面は減っています。
ベースラインなどの整列やストロークの補正は、言い換えればグリフの形の微調整です。アウトラインを尊重する立場からは、あえて変形を行わないという発想も成立します。ヒンティングを採用するかどうかは、表示の安定性とアウトラインの忠実さのどちらに重きを置くかという選択でもあります。
macOSやiOSなどのApple製品では、描画エンジンがヒンティングを行っていません。Appleがヒンティングを手放す決断をしたのは、Retinaディスプレイが出るよりもずっと前、2001年の「Mac OS X(10.0)」の登場時です。ヒンティングによる補正がアウトラインの形をわずかに変える可能性がある以上、その変形を避けるという選択肢です。一方で、AdobeアプリケーションはmacOS上でも独自の描画エンジンを使っており、ヒンティングを取り入れています。小さいサイズの表示での安定性を重視するという判断だと思います。

未来の話をするなら、ヒントが不要になる場面が増えてくるのは確かでしょう。ただ、ヒントが完全に消えてなくなる日がいつ来るのかはわかりません。
(mm)