タイププロジェクトのデザイナーやエンジニアが、書体関連のあれこれを投稿していくブログです。書体デザイン・組版の豆知識や開発の裏話、スタッフおすすめの書籍紹介など幅広い内容でお届けします。

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TPスカイ モダン開発ストーリー 03「TPスカイ ファミリーの一員として」

TPスカイ モダンが属している「TPスカイ ファミリー」には、太さやラウンドを選べる以外にも、字幅、コントラスト、フトコロの軸が存在します。本シリーズで紹介している「TPスカイ モダン」は、「TPスカイ セミクラシック」「TPスカイ クラシック」と共に、TPスカイのフトコロ軸に位置しています。 以前の記事で、TPスカイ モダン Blkの制作時にチェックしていたポイントをいくつか…

25.07.07シリーズその他 / D&Tを使ってみよう

Drop&Typeを使ってみよう01:簡易版!Drop&Typeを使ったフォントの作り方

Drop&Type は試作フォント生成ツールです。Adobe Illustrator で作った文字のアウトラインを専用のドロップシートに収めてドロップするだけで、専門知識がなくても簡単にフォント生成(OTF生成)をすることができます。 ではさっそくフォント作成の手順を紹介します! まず、フォントにしたい文字のアウトラインデータを用意します。アウトラインデータの作成方法は…

今月の一冊(2025年6月)『文字をつくる―9人の書体デザイナー』

今回は、雪朱里著、『文字をつくる―9人の書体デザイナー』をご紹介します。 本書は、インタビューと書体のメイキング、その組み見本という構成で9人の書体デザイナーを紹介しています。紹介されているデザイナーの年代も幅広く、金属活字から写植、デジタルフォントまで、各時代の文字づくりについての話にふれられています。9人のそれぞれの視点から文字づくりについて知ることができる内容だと思います…

TPスカイ モダン開発ストーリー 02「極太の後に極細を作る」

TPスカイ モダン Blkの次に入ったのはULの制作でした。画面が真っ黒になるくらいの太さから、急に極細のULに移ったので、最初の一文字に着手した時、文字の作り方を忘れたかのように手が止まったのを覚えています。 Blackでは「黒みの調整」が多かったのに対し、ULの制作では「骨格のバランス」をより強く意識する必要がありました。文字に太さがない分、骨格がそのまま反映される状態なの…

フォントを作る人に聞いてみた その9:比較的デザインがしやすいグリフ

前回の「デザインするのが難しいと感じるグリフ」に引き続き、今回は「比較的デザインがしやすいと感じるグリフ」は何かをタイププロジェクトのデザイナー達に聞いてみました。 回答の中で多かったのは「書体によって変わる」「あまりない」というものでした。 ・ 書体のデザインによって変わる。 ・ 書体によって変わりますが、「の」はわりと気楽に作ります。 ・ あまりない: やはりまだどのグリフ…

TPスカイ モダン開発ストーリー 01「あちらを立てればこちらが立たず」

TPスカイ モダンには、最初に極太のウエイト「Black」の制作に参加し、その次に「UL」を制作しました。ウエイトの高低差が一番激しい移行だったと思います。 自分がBlackに参加したタイミングでは、漢字制作がかなり進んでおり、既に全体のデザインルールができている状態でした。TPスカイ モダンの雰囲気を掴みつつ、Black特有の制約と戦いながら制作に臨みます。 TPスカイ モダ…

フォントを作る人に聞いてみた その8:デザインするのが難しいグリフ2

タイププロジェクトのデザイナー達に「デザインするのが難しいと感じるグリフ」は何かを聞いてみました。 前回は画数について言及した回答を紹介しましたが、今回はその他の回答と欧文グリフについての回答も紹介していきます。 和文関連のグリフでは「ふ」を挙げた人が2名いました。どこをつなげてどこを離すかなど骨格のバリエーションも多いですしバランスを取るのが難しいグリフなのかもしれません。 …

フォントを作る人に聞いてみた その8:デザインするのが難しいグリフ1

タイププロジェクトのデザイナー達に「デザインするのが難しいと感じるグリフ」は何かを聞いてみました。 この質問への回答は個人個人で差がありましたが、画数について触れていたものがいくつかありました。 ・ 画数が少ない漢字、ひらがな: 単純なつくりの文字ほど、要素が少なくてうまく決まらないです。 ・ その時のデザインや制約などの条件によるので特定するのが難しいですが、単純に画数の多い…

和文約物05「記号類」

丸・三角・四角のような図形や天気マークなど、収録されている記号類はフォントセットによって様々です。 図形は数値的に同じ大きさで揃えるのではなく、視覚的に同じような大きさに見せるのがポイントです。同じような大きさに見せるというのは、図形だけではなく他のグリフにも言えることです。タイポグラフィの基礎を学んだ際、まさにこのような図形で視覚調整の練習をしたことをよく覚えています(こちら…

今月の一冊(2025年4月)『文字の食卓』

今回は、正木香子著の『文字の食卓』を紹介します。 本書は著者が主に写植書体に感じる滋味豊かな味わいを思い出と共に綴ったエッセイです。書体ごとに食にまつわることに例えて紹介しているところが特徴的です。各書体の説明には書体の制作背景などと共に、書籍や雑誌、漫画などの事例の一部分が掲載されているので、書体見本帳として眺めて楽しむこともできます。 書体の印象を言葉で伝えることはなかなか…

フォントを作る人に聞いてみた その7:最初にデザインするグリフ

タイププロジェクトのデザイナー達に「書体デザインをするときに最初に作るグリフ」は何かを聞いてみました。 和文デザイナーの回答の中で特定のグリフとして多く挙げられたのは「あ」でした。 また、その次に多かったのが「書体の雰囲気にあったグリフ」という回答です。 やはり最初に作る文字はその後に続く文字のデザインの基準にもなるので、書体全体のイメージを想像しやすいグリフから作業を始める人…

和文約物04「矢印」

前回の括弧と同じく、矢印にもいくつか種類があります。そして矢印によっては上下左右でそれぞれグリフを用意するのも忘れずに。横向きと縦向きとで同じカタチを使っても同じような太さに見えないことがあり、その場合は見た感じで同じくらいに見えるよう調整を入れます。どこで同じカタチを使ったか、どこに調整を入れたか、きちんとチェックしながら進めないと修正があった際に困ってしまいます。 矢印は明…

今月の一冊(2025年3月)『現代図案文字大集成』

今回は、「現代図案文字大集成」を紹介します。 昭和9年に刊行された「現代図案文字大集成」の新装復刻版です。 図案文字、映画演劇広告文字、商品文字、書体と活字体、いろは文字、英字図案、モノグラム / マーク集の7編に渡り、昭和初期の図案家達の手によって書かれた、さまざまな文字が収録されています。全ページの隅々まで作品が掲載されており、小さいサイズながら、とてもボリュームがあります…

フォントを作る人に聞いてみた その6:数字・記号類の中で好きなグリフ

タイププロジェクトのスタッフ達に「数字・記号類の中で好きなグリフ」は何かを聞いてみました。 フォントの中には様々な数字・記号類があり和文由来のものと欧文由来のものを合わせるとかなりのグリフ数がありますが、回答に上がったのは使用頻度も高く馴染みのあるグリフたちでした。 ・ &: 意味としてはつなぎなのに主役級の華があるように感じていて、ついチェックしてしまう文字です。 ・…

フォントを作る人に聞いてみた その5:好きなラテンアルファベットのグリフ

タイププロジェクトのスタッフ達に「好きなラテンアルファベットのグリフ」は何かを聞いてみました。前回までは漢字・仮名といった和文のグリフについて好きなものを聞いてきましたが、今回は欧文のラテンアルファベットについて好きなグリフを聞いてみました。 回答が多く集まったのは「a」と「g」です。 ・ g:特徴量が多いので、いろんな足し引きがしやすく、バリエーションも多いので、見ても作って…

和文約物03「括弧」

今回はどうにもややこしい括弧類のお話です。丸括弧()やカギ括弧「」のようにいくつかの種類がある上に、それぞれに開きと閉じ、横組み用と縦組み用、全角と半角、と必要なグリフを考えるだけでもちょっとややこしく思えてきます。 括弧のデザインで気をつけたいのが、全角の括弧でも半分の幅でデザインするという点です。組版の括弧前後のアキには様々な設定があるため、半分の幅を超えてデザインすると隣…

純丸明朝 開発ストーリー 2「筆画の細部」

純丸明朝の漢字制作はスケッチから始めました。だいぶ前に描いたものを改めて見て振り返ると気になるところが多いのですが、形がかなり異なっています。先行して制作されていた仮名は、初期の段階ではもう少しコントラストがついていました。そのため、横画や、左ハライの先端はスケッチでは細くなっています。筆画の細部はぼてっとしていて重く、縦画の起筆やウロコのサイズは大きいです。 スケッチと純丸明…

和文約物02「音引き・踊り字」

今回扱うのは音引きと踊り字です。 音引き(ー)はシンプルな一本の線のようでいて、やはり各フォントに合わせてデザインする必要があります。縦組み用と横組み用の作り分けもあり、ただ回転させるのではなく起筆終筆の形を変えたり線の角度を調整したり同じくらいの太さに見えるように細かな調整を加えたりしています。音引きの制作は仮名のデザインが決まった後にしたいと思うこともあるのですが、カタカナ…

ベジエ曲線入門01「ベジエ曲線とは」

ベジエ曲線とは、コンピューターグラフィックでよく使われる、直線や曲線を描くための数学的な手法です。フォント制作や実際にフォントをスクリーンに描画する際も、このベジエ曲線が使われています。 ベジエ曲線は、始点と終点、そして曲がり具合を操作する制御点によって描かれます。 ベジエ曲線はN次の多項式からなる関数で表されるもので、1次・2次・3次…と一般に N 次のベジエ曲線がありますが…