タイププロジェクトのデザイナーやエンジニアが、書体関連のあれこれを投稿していくブログです。書体デザイン・組版の豆知識や開発の裏話、スタッフおすすめの書籍紹介など幅広い内容でお届けします。

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今月の一冊(2025年12月)『筆蝕の構造―書くことの現象学』

今回は、石川九楊著、『筆蝕の構造—書くことの現象学』をご紹介します。 本書は、書家として活躍されている著者による書道の枠を超えて「書く」という行為の本質に迫る哲学的な書字論です。題名にある「筆蝕(ひっしょく)」は著者による造語で、筆が紙に触れ、圧し、運び、止め、そして離れる、といった書く動作の全体に通底する触覚とそこに定着された痕を指し、書くことの根源的な力を表現しています。話…

ベジエ曲線入門06「Glyphs API」

フォント制作ソフトやレンダリングエンジンをプログラミング言語から操作する API もフォーマットの一つと言えるでしょう。このうち、フォント制作で触れるものとしてGlyphs API を紹介します。 Glyphs は、ドイツのタイプデザイナー・ソフトウェア開発者である Georg Seifert によって開発されたもので、ここ数年で人気を集めたフォント制作アプリケーションです。G…

25.11.10シリーズその他 / D&Tを使ってみよう

Drop&Typeを使ってみよう06:よくあるアウトラインのエラーと対処法01

前回の記事ではパス描画の際のコツや注意点について触れてきました。 今回はパス描画のエラーが原因でDrop&Typeで生成したフォントの文字がうまく表示できない時の事例や対処法をいくつか紹介します。 1つ目は1文字のアウトラインの中で複数のパスが重なっている時に起こるエラーです。通常は複数のパスが重なっていても問題なくフォント上で文字は表示されますが、稀にアウトラインの一…

ベジエ曲線入門05「UFO の Glif フォーマット」

近年のフォント開発現場では「UFO(Unified Font Object)」というフォーマットを扱うことが増えてきました。 UFO では各データが独立したファイルとして保存され、しかも可読性の高い XML で記述されます。バージョン管理ソフトとの相性が良く、コラボレーションが容易になるのが大きな利点です。 UFO フォーマットでは、各グリフの情報は GLIF(GLyph In…

フォントを作る人に聞いてみた その10:日本語の文字以外で興味のある文字2

タイププロジェクトのデザイナー達に「日本語で使用されている文字(漢字・ひらがな・カタカナ・ラテンアルファベット)以外の文字で興味がある、またはデザインしてみたい文字」は何かを聞いてみました。 前回は一番多かったハングルについての回答を紹介しましたが、ハングル以外にも様々な地域の言語に使われている文字が挙げられました。 ・ アラビア文字: 礼拝堂の建築物自体に(日本語ではあまりな…

25.10.06シリーズその他 / D&Tを使ってみよう

Drop&Typeを使ってみよう05:アウトライン描写のコツ02:パスの方向

前回の記事でパスの形状を調整するときのハンドルの方向について触れましたが、今回はパス全体の方向についてフォント化する時の注意点を紹介します。 Illustrator上でパスを描画してイラストを作成する際にはパスを引くときの方向や順番を特に気にする必要はありませんが、そのパスをフォント化する場合にはパスの方向に注意が必要です。 フォント化の際には黒く塗りつぶしたい部分のパス方向を…

25.09.22シリーズその他 / D&Tを使ってみよう

Drop&Typeを使ってみよう04:アウトライン描写のコツ01:アンカーポイントとハンドル

これまでにIllustratorの「画像トレース機能」と「ペンツール」を利用した文字のアウトライン化について紹介しました。 今回からはアウトラインを描画するときのコツやフォント化する上で注意した方が良いポイントなどを紹介していきたいと思います。 まずはペンツールで文字をなぞる時の手順についてです。スキャンした文字をなぞっていく時、ついつい下書きの文字の細かい形状を丁寧に追うよう…

ベジエ曲線入門04「PostScript」

PostScript はページ記述言語と呼ばれ、印刷用データを定義するために Adobe で開発されたプログラミング言語です。身近な例として、PDF の内部構造は PostScript をベースにしています。 多くの OpenType フォントのアウトライン情報は PostScript で記述されているため、フォントエンジニアリングでは避けられない形式です。 少し詳しく話すと、…

25.09.01シリーズその他 / D&Tを使ってみよう

Drop&Typeを使ってみよう03:Illustratorを使った手書き文字のアウトライン化02:ペンツールでなぞる

前回の記事では手書きの原稿からIllustratorの画像トレースを使用して自動的にアウトラインを作成する方法をご紹介しました。 今回はスキャンした手書き文字をIllustratorのペンツールを使って1文字ずつなぞっていく方法を紹介したいと思います。手書きの文字をスキャンする際の注意点などは前回の記事を参考にしてみてください。 スキャンした画像をIllustratorで開き、…

フォントを作る人に聞いてみた その10:日本語の文字以外で興味のある文字1「ハングル」

タイププロジェクトのデザイナー達に「日本語で使用されている文字(漢字・ひらがな・カタカナ・ラテンアルファベット)以外の文字で興味がある、またはデザインしてみたい文字」は何かを聞いてみました。 複数回答があったのは韓国語で使用されている文字の「ハングル」です。 興味を持った理由は下記のようなものでした。 ・ 完全に見た目から入っていますが、幾何形態っぽいのと、字のパーツのルールに…

ベジエ曲線入門03「SVG」

本記事から数回に分けて、各種フォーマットに触れていきます。いずれのフォーマットでもベジェ曲線の描画コマンドは共通です。具体的な書き方はフォーマットとは別にまとめて解説します。 SVG は私たちにとって身近なベクター画像フォーマットの一つです。Web ページのロゴやアイコンなどに広く使われています。フォントエンジニアリングでも、アウトラインの確認に SVG を利用することがありま…

25.07.28シリーズその他 / D&Tを使ってみよう

Drop&Typeを使ってみよう02:Illustratorを使った手書き文字のアウトライン化01

Drop&Typeで手描き文字をフォント化するときは、手描き文字のアウトライン化が必要です。そこで、今回はIllustratorを使って手描き文字をアウトライン化する方法を紹介します。 まずは文字を手書きしてスキャンします。画像の白と黒がハッキリしているとアウトライン化しやすいです。もし余裕があればインクの色・スキャン設定・スキャン後の色調整などで白と黒をハッキリさせて…

TPスカイ モダン開発ストーリー 03「TPスカイ ファミリーの一員として」

TPスカイ モダンが属している「TPスカイ ファミリー」には、太さやラウンドを選べる以外にも、字幅、コントラスト、フトコロの軸が存在します。本シリーズで紹介している「TPスカイ モダン」は、「TPスカイ セミクラシック」「TPスカイ クラシック」と共に、TPスカイのフトコロ軸に位置しています。 以前の記事で、TPスカイ モダン Blkの制作時にチェックしていたポイントをいくつか…

25.07.07シリーズその他 / D&Tを使ってみよう

Drop&Typeを使ってみよう01:簡易版!Drop&Typeを使ったフォントの作り方

Drop&Type は試作フォント生成ツールです。Adobe Illustrator で作った文字のアウトラインを専用のドロップシートに収めてドロップするだけで、専門知識がなくても簡単にフォント生成(OTF生成)をすることができます。 ではさっそくフォント作成の手順を紹介します! まず、フォントにしたい文字のアウトラインデータを用意します。アウトラインデータの作成方法は…

今月の一冊(2025年6月)『文字をつくる―9人の書体デザイナー』

今回は、雪朱里著、『文字をつくる―9人の書体デザイナー』をご紹介します。 本書は、インタビューと書体のメイキング、その組み見本という構成で9人の書体デザイナーを紹介しています。紹介されているデザイナーの年代も幅広く、金属活字から写植、デジタルフォントまで、各時代の文字づくりについての話にふれられています。9人のそれぞれの視点から文字づくりについて知ることができる内容だと思います…

TPスカイ モダン開発ストーリー 02「極太の後に極細を作る」

TPスカイ モダン Blkの次に入ったのはULの制作でした。画面が真っ黒になるくらいの太さから、急に極細のULに移ったので、最初の一文字に着手した時、文字の作り方を忘れたかのように手が止まったのを覚えています。 Blackでは「黒みの調整」が多かったのに対し、ULの制作では「骨格のバランス」をより強く意識する必要がありました。文字に太さがない分、骨格がそのまま反映される状態なの…

フォントを作る人に聞いてみた その9:比較的デザインがしやすいグリフ

前回の「デザインするのが難しいと感じるグリフ」に引き続き、今回は「比較的デザインがしやすいと感じるグリフ」は何かをタイププロジェクトのデザイナー達に聞いてみました。 回答の中で多かったのは「書体によって変わる」「あまりない」というものでした。 ・ 書体のデザインによって変わる。 ・ 書体によって変わりますが、「の」はわりと気楽に作ります。 ・ あまりない: やはりまだどのグリフ…

TPスカイ モダン開発ストーリー 01「あちらを立てればこちらが立たず」

TPスカイ モダンには、最初に極太のウエイト「Black」の制作に参加し、その次に「UL」を制作しました。ウエイトの高低差が一番激しい移行だったと思います。 自分がBlackに参加したタイミングでは、漢字制作がかなり進んでおり、既に全体のデザインルールができている状態でした。TPスカイ モダンの雰囲気を掴みつつ、Black特有の制約と戦いながら制作に臨みます。 TPスカイ モダ…

フォントを作る人に聞いてみた その8:デザインするのが難しいグリフ2

タイププロジェクトのデザイナー達に「デザインするのが難しいと感じるグリフ」は何かを聞いてみました。 前回は画数について言及した回答を紹介しましたが、今回はその他の回答と欧文グリフについての回答も紹介していきます。 和文関連のグリフでは「ふ」を挙げた人が2名いました。どこをつなげてどこを離すかなど骨格のバリエーションも多いですしバランスを取るのが難しいグリフなのかもしれません。 …

フォントを作る人に聞いてみた その8:デザインするのが難しいグリフ1

タイププロジェクトのデザイナー達に「デザインするのが難しいと感じるグリフ」は何かを聞いてみました。 この質問への回答は個人個人で差がありましたが、画数について触れていたものがいくつかありました。 ・ 画数が少ない漢字、ひらがな: 単純なつくりの文字ほど、要素が少なくてうまく決まらないです。 ・ その時のデザインや制約などの条件によるので特定するのが難しいですが、単純に画数の多い…